夏のシーカヤック遠征(秋田・男鹿半島~青森・津軽半島その4)

 

4日目

八森・白神温泉~深浦・不老不死温泉(漕行距離約40キロ)

 波の上を滑るように進む浮遊感の虜だ。長い距離をただガムシャラに漕いでいるわけでなく、漕ぐごとにもっと海と一体になろうとしているのかもしれない。船体の1ミリのスキンとパドルのブレードに、全感覚を研ぎ澄ませる。海に浮かんで前へ進むというのは、大海原を漕いだことがない人に、たやすく想像できるほど単純なことじゃない・・・

 海の表情はいつもちがう。カヤッカーは海に出るたびに、なにかしら発見がある。風一つとっても、千差万別。潮流、うねり、海水温、岬や湾といった陸地だけでなく海底の凸凹や地質といった地形などなど、様々な要因が複雑に絡み合う。

2820siraga02ちょうど良く海の家があり上陸休憩

 快調だったパドリングが、一転鈍重になることがある。海面は穏やかで、逆潮に逆らっているわけでもなさそうだし、長時間パドリングした疲れのせいでもない。パドルのブレードでキャッチする海水がとにかく重いのだ。水の分子がびっしりと圧縮され、鉄の塊のような鈍重さ。狐につままれたような不思議な感じだ。

2820sira11なぜか重いパドリングは疲れのせいじゃない・・・

 白神温泉のキャンプ地を出航して数時間後、途中チゴキ崎の海の家で休憩したりしながら、いよいよ秋田と青森の県境である須郷岬を越える。今までずっと砂浜海岸が多かったのが、この辺りはちょっとした岩礁帯である。ブリ系の魚群が南下しているのだろうか、たくさんの魚が跳ねるのを目撃。魚群がカヤックの真下を通り過ぎていくのが見えたときは、思わず興奮する。あわてて竿をだすが、まったく見向きもされなかった。

2820sira12カヤックから小魚を手掴み

 そろそろ白神岳が見えてくることを楽しみにしていたが、残念ながら上部は雲の中だった。右斜め前方遙かにガンガラ穴が見えてきた。相棒が後ろからパドリングが重くなったと訴えてくる。自分自身もそう感じていたのだが、気持ちを迷わせないようにリズミカルなパドリングに徹していたのだが、その言葉で一気に疲れが出てくる。こういうことは今までにもあって、あまり気にしていなかったのだが、相棒も同じだということが気になる。海はいたって穏やかなのに、確かに重いのだ。それにさっきから群れから外れ弱った小魚が海面に浮いているのが目に付く。この海の変化は、小魚にも影響があるのかもしれない。

2820sira06艫作崎から状況一転!

 どうやら、これは嵐の前の静けさだった。艫作崎をかわすあたりから向かい風が強くなり、うねりが出てくる。チゴキ崎の海の家から20キロ以上休憩なしで漕いできて、あとわずかでゴールの不老不死温泉だと安心していた身には辛い試練となった。進むほどに波風が強くなった。ようやく右に不老不死温泉の露天風呂が見えたときは、限界だった。這々の体で露天風呂のある小さな入り江に上陸した。男風呂と女風呂を区別する余裕などもちろん無くて、カヤックを着けた場所が男風呂のそばの方でよかった!?

 水の分子がびっしりと圧縮され、鉄の塊のようなあの鈍重な海は、この激しい波風が艫作崎から風の陰になる湾内に流れ込み圧縮されたせいじゃないかと、うまく口で説明しにくいのだけど自分なりに納得してみた。
 

2820sira10カヤッカーのあこがれ・・・海岸の露天風呂に横づけだい!

 ところで、もっと優雅にゴールしたかったけど、贅沢は言えない。とにかく無事だったんだから。風が強くてテントを張るのも一仕事なくらいだった。しかし、今夜は不老不死温泉の露天風呂で極楽! 

2820sira07翌朝、怒濤の海だった・・・

5日目

深浦・不老不死温泉にて中断(漕行距離0キロ)

 相棒は、ここまでで旅を中断することになっていたが、私の最終目的地は津軽半島の今別。まだ約半分しか来ていない。1日くらいこんな日があるのは、休養日としてむしろ歓迎だ。でも、この状態は2~3日続きそうだった。とにかく今日は出発地の男鹿まで電車で戻って車を回収してくることにした。朝8時4分の列車を逃すと、もう午後2時6分までないから、乗り遅れないように駅へ急ぐ。不老不死温泉の駅はもちろん無人駅だが、小さな待合室の駅舎がバックパッカーのホテルになっているようだ。若者達の旅の感動を彷彿とさせる様々な落書きがあった。

2821sira08昨日漕いだ海岸線を列車で逆コース

 夕方テントとカヤックを置き去りにした場所に戻ろうとして仰天。海岸に付けられた道が、打ち寄せる高潮のために30m程海水に没しているのだ。深いところは30センチくらいだろう。今晩ここでキャンプは危険と判断。あわてて近くの無料のキャンプ場に引っ越しすることにした。この判断は正しくて、翌朝海はさらに荒れていた。

2821sira09白神の渓の宝石

 結局不老不死温泉の露天風呂にやっかいになりながら、2泊過ごす。私の津軽までの旅も、今回はここまでであきらめることにした。また不老不死温泉に来る理由が出来た。次回はここから旅がはじめられる。津軽半島の竜飛岬は、山に例えたら北アルプスの3000m級かもしれない。そう思えば、潔い撤退だ。

 最終日の朝、ちょっと白神のお気に入りの渓流に入って竿を出した。見事な31.5センチのヤマメが、清冽な流れの中から銀鱗をきらめかせ躍り上がった! 

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