10年前の2005年7月16~18日、佐渡島一周が完成した。その9年前の夏、小木から七浦海岸や外海府海岸を回って、両津の白瀬という小さな漁港まで漕いだが、その残りの部分を漕破した。小木から前浜海岸や東海岸を経て白瀬まで。このコースは、目立った観光スポットがほとんど無く、とても静かな夏の海を楽しむことができた。これで新潟県の全海岸線を漕破したが、越佐海峡横断はいつの日か・・・
直江津港9時50分発のフェリーで佐渡に渡る。いつものことで、組み立てに大汗をかき、近くのJAで非常食を買い出しする。昼飯を食べるのも忘れて小木を午後2時半に出航。ベタ凪、微風追い風。天気は回復傾向で、実はこの海旅の間に梅雨明けしたらしかった。久しぶりにフェザークラフトK1Cを漕いだが、スキンカヤック独特の海を滑らかに進むしなやか感が、とても心地良い。リジッドカヤックとは明らかに違う乗り心地で、スピードや安全性は劣るかもしれないけれど、海がより身近に感じられるような気がする。あらためてスキンカヤックの魅力があると思った。
昨夜は小木から2時間ほど漕いで、赤泊の先でキャンプした。サンライズ城ヶ浜という温泉施設と、春日という焼酎好きには垂涎の飲み屋があった。カヤック旅にとってこれは申し分ない。できればキャンプじゃ無くて、温泉施設に泊まりたかったが、海の日3連休だから、もちろん満館だった。
そして、今日はどうやら天気も上々のようで、追い風に乗って気分良く漕ぎ進む。半農半漁の集落がとぎれとぎれにあるこの前浜海岸は、ほとんど観光地化されてなくて、どこかに寄ろうにもお店らしきものはなーんにも無いので、上陸を戸惑う。ただし、郵便局の赤いマークの建物がどこの集落にもあった。激しい郵政民営化議論の中で、どことなく不安そうに建っているように感じられた。
姫崎をかわすと向かい風になった・・・姫崎の手前の月布施も水津も、食堂はおろか酒屋さえもなかった。津神島公園のある大川にようやく酒屋があった。ここを今夜の幕営地に決めた。缶ビール片手に心地よい潮風を浴びながらの夕涼みは、1日パドルを漕いだ後の1番の楽しみである。
3日目の朝、まだ暗いうちに起きて、大川を発つ。東海岸の漕行は向かい風になった。仏崎付近で、突然トビウオが眼前を飛んだ。びっくり仰天したが、その後もっと凄いことが起こる。1m近いシイラが飛び、トビウオを追っかけているのだ。数秒後、そのトビウオに食いついた。海面を滑るように泳ぎ、最後に身をよじるようにして食らいついた様は、まるでサバンナのライオンが獲物を手中に納めたかのようだった。大自然のドラマを目の当たりにした。両津湾は定置網による寒ブリ漁が有名なところだ。冬の佐渡にも訪れてみたい。
いよいよ今回の最大難所である両津港の通過だ。とてものんびり漕ぐことはできない。もし漕行中に、フェリーやジェットフォイルが現れたら大変だ。遙かに見える両津港に停泊している、大きなフェリーが今にも動きそうで不気味である。佐渡汽船でもらった時刻表を確認する。どうやら始発のフェリーの時刻まで小一時間ある。早立ちしたのが幸いした。航路上と思われる海域は、時速8kmで全力疾漕である。両津港を過ぎ内海府海岸へと進路が変わると、また追い風になった。一周のゴール地点となる白瀬漁港には、午前七時半頃に着いた。何となく見覚えがあったが、記憶よりもずっと小さな漁港だった。10時20分発のフェリーに間に合わせるために、タクシーで小木へと戻った・・・・
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