
本流との出合まで漕ぐと奈良沢の奥に見覚えのある巻機山や牛ヶ岳の伸びやかな稜線が頭を出し始める。まさにバックカントリー天国のような素敵な斜面が広がっていて、大好きなエリアです。今年2度目の強い冬型の天気で一昨日辺りからまとまった雪が積もったようです。ちょうどブナの森の紅葉が見頃でしたが、さらに高い山の新雪が見事なコラボレーションでカヤッカーの目を楽しませてくれました。

昭和12年刊日本登行会編「上越の山」の巻末には付録地図が付いていて、藤原編にはダム湖に沈む前の利根川源流域の様子が興味深いです。地図に目を凝らすと、奈良沢出合小屋から本流へ少し遡ったところに湯の花湯という山小屋があったことがわかります。本文を紐解くと、「湯の花には無筆の番人夫婦と聾の女の子が暮らしている。雪に埋もれて里の人を見ずにいるから、スキーで行けば珍しがって迎えてくれる。湯槽は川に臨んでいるから、月明に水聲や対岸の雪崩を聴きながら浸ると、相当気分が出る。」という記述があります。

本流の奥には平ヶ岳らしきこれまたたおやかな稜線が頭を出してました。今日はこちらには入らず奈良沢へ漕ぎ入ります。前回遡行した幽ノ沢を通り過ぎ、まずはコツナギ沢へ。ほとんど風がない今日は波がまったく立たず、鏡のように静かな湖面のパドリングは単調です。

コツナギ沢の奥に眺められるのはおそらく柄沢山の稜線でしょう。バックウオーターにはキノコ採りらしきエンジン付きボートが一艘残されていました。

上陸しないでそのまま奈良沢バックウオーターへ周ります。こちらにも一艘のエンジン付きボートが岸に着けられています。どうやらダム関係者の水質検査らしく忙しそうに働いていました。

バックウオーターに流れ込む奈良沢の水は冷たくて、澄んだ流れに泳ぐ魚影を一生懸命探してみましたが、まったく見つかりませんでした。

いつもならここでゆっくりランチタイムですが、ここでも上陸しないで今日は早めに帰路につきました。

貯水率は前回10月に来た時よりも増えましたが、それでも50%に満たないくらいでした。今シーズン、カヤックは3回しか漕げなかったけれどこれで漕ぎ納めになりそうです。
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