
天気予報では、もっとすっきりした天気になるかと期待していたが、草津白根の上部は雲がかかり流れている。雪も少ないのでまったくやりきれない気分になるが、とにかく行けるところまで行ってみようと思う。この冬の天候はどうかしてる。暮れにまとまった積雪があったようなのだが、もう1月の半ばだというのにそれからほとんど降ってないようなのだ。小一時間も歩き通すと、やがてハギワ平への急斜面が見えてきた。傾斜が急だとそれだけ太陽の直射を受けることになるので、雪消えが早くなって熊笹の緑がやけに目立つ。本当に登れるのかななんて心配してしまうが、熊笹の下の雪は完全にザラメ雪と化しているので、見た目より楽に笹藪の中をスキーで登っていくことができる。これでは引き返す口実がなくなってしまった。
この広い尾根には、草津町の上水道の管がいくつも横切っていた。尾根の向こう側のガラン沢の支流から引いているのだろう。今まで何度も訪れていたが、これまでは雪に埋もれていてわからなかっただけで、関連施設があちこちあるのに驚いた。また施設を点検するための作業道らしきものもある。この道筋を利用すれば笹藪漕ぎもなく、楽になった。急斜面を登り切ると、一気に景色が広がる。この辺りの景色は、私のお気に入りである。振り返ると八間山や白根、浅間の山々が新鮮な角度から望める。ちょっとコーヒーブレイク。
この広い尾根は、上部にいくにしたがいだだっ広くなり、昔から遭難が多いところである。最近では、高崎の中学生か高校生の兄弟が、横手山スキー場からガラン沢へ迷い込み大騒ぎになった。幸いこの兄弟は無事発見されて助かったのだが、過去には助からなかった遭難事故も数多いようだ。かなり昔、昭和36年頃だか、若い女性二人が10日間余りもガラン沢をさまよい歩き無事救助されたという話もある。もっと昔には、山スキーをしに来た外人がガラン沢で遭難死したのだが、どうもその外人はスパイで実は遭難死ではなく殺人ではないのかという謎の事件もある。いずれにせよこの辺りはそういう話がたくさん残っているところなのである。
ハギワ平を抜けると、やがて植生は落葉松林から針葉樹の原生林に変わる。これまでも所々赤いテープが巻いてあったのだが、これは新しいスキー場建設のための調査の跡なんだろうか。かなり先の話になるようなのだが、着々と建設に向けて事が進んでいるという話である。でも上部は国立公園であり、草津町の水源地帯でもあるということから、このあたり全部がスキー場になることはないそうだ。そうなると、ゲレンデスキーヤーから見ればあまり魅力のないスキー場をイメージしてしまうのだが、それでも建設するのだろうか。最近どこのスキー場も不景気で、何か大きなセールスポイントがなければ赤字は当たり前という時代である。どうなる事やら・・・
歩くにしたがい、針葉樹の森は深くなる。コンパスがなければ自分がどういう方向で歩いているのかさっぱりわからなくなる。はじめ北西方向に進んでいたが、少しずつ南へ進路を取り、1900mくらいから南西に進路を取らないといけないのだが、まったく森の中をさまよい歩くという感じだ。この針葉樹は厳冬期モンスターになる。その様は蔵王のモンスターにも負けない雰囲気を醸し出す。でも今日は、青々としている。ガスっているのでそれでも十分幻想的だが・・・。
耳を澄ましてみてもまだ渋峠スキー場のリフトの音は聞こえてこない。このあたりにくると、なぜか登りの疲れも出てきて早く聞こえてこないかとリフトの音が恋しくなるのだ。すると、いきなり渋峠と芳ヶ平を結ぶ登山道に出くわした。耳を澄ますと、横手山スキー場のリフトの音も聞こえてきた。そちらに進路をとろうかとも思ったが、ガスも濃くなってきているし、直接池ノ塔山を目指すことにした。しばらくして志賀草津道路も横断し、なおもなだらかな斜面を歩いていくと山頂らしきところに着いた。12時30分ジャスト。標柱もないので、どこだかわからないと思うが一応セルフタイマーで写真を撮って、テルモスのコーヒーをすすり、早々に芳ヶ平へ滑降することにした。
12時40分滑降開始。モナカ雪状で滑りにくい。もっと幅広の板ならまだましだが、2m10cmのクロカンに近い板では、非常に難しい。片足加重にするとあっという間にひっかかって体が空中に投げ出される。そうかといって恐々と滑っていると、腰が引けすぎて滑りの醍醐味もなくつまらない。そのうち、どんどん天気も崩れてきて視界が悪くなり、しまいには雪も降り出してきた。なんたること!滑りの醍醐味なんていってられなくなり、とにかく芳ヶ平ヒュッテ目指して早く確実に滑り降りた。
芳ヶ平に降り立つと、湿原の中の小さな川が雪に埋もれていなかった。やはり雪が少ない。久しぶりに芳ヶ平ヒュッテを訪ねた。中からチャーリーパーカーのアルトが聞こえてくる。主人はジャズが好きなのだ。愛犬フロールとバードが私に気づき吠える。中を覗き込んでいると主人がにこやかに出迎えてくれた。小屋に入るとフロールとバードが私にまとわりついて舐め回す。初めてこの小屋に訪れたときは、犬の扱い方がわからなくて怖かったけど、今では余裕である。かわいい。
主人の話では午前中に3人ほど草津のスキー場からツアー客が来たそうであるが、雪が無くて天狗山スキー場まで滑り降りるのは大変だよと言ったら、また戻って行ったそうである。20分ほど休憩して下山した。主人は大丈夫かと心配してくれたが、ここからは庭みたいなものなので、迷わず出発。芳ヶ平の小屋から大平湿原への尾根を下る。この尾根にはちょっとしたピークがあり、私たち仲間内ではおむすび山と呼んでいる。大平湿原方向から見ると三角山でおむすびに見えるという単純な理由からだ。ここから急に雪の量が減り、笹藪の中の滑降となってしまった。大平湿原には、下からスキーで登ってきて滑り降りたらしいシュプールがあった。そのシュプールには見るからに悪雪を滑る苦労が滲み出ていて、ご苦労さんとお互い慰め合いたい気持ちになった。
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