越後駒ヶ岳は20代の頃からずっと山スキーのお気に入りの山です。2026年は午年ということで、今年は全国の駒ケ岳が賑わうかもです・・・

2001年5月
5月の連休を過ぎると、雪消えのスピードは加速度的に速まる。長いあいだ雪の下で耐えていたネマガリやツツジ類の低木が、ザラメ雪をはねのけて、息を吹き返すように立ち上がる。陽当たりのよい尾根筋では、すでに若葉が開き、色とりどりの花が咲き始め、透き通るような青空を背景に春を謳歌しているかのようだ。

銀山平の石抱橋から北ノ又川沿いに遡って、のんびり歩く。北ノ又川の清冽な流れにからまって仰ぎ見える中ノ岳や荒沢岳が、気分を高めてくれる。柳沢に分け入って道行山までは、スキーを履いた登山者にとって藪がうるさい。しかし、可憐なイワカガミやかたくり、ショウジョバカマ、うっとりするようなシャクナゲ、目の覚めるようなコブシなどの花たちが、たった二人の登山者を歓迎してくれる。藪にスキーがひっかかって悪態をついても、なんだか満ち足りた気分である。

心地よい春風にのってトビが舞う。しばらく見とれるほど、気持ちよさそうに風を受けている。すると今度はギャーとカラスが羽根をバタつかせて頭上を過ぎていく。なんとトビが舞い戻ってきて、カラスを追いかける。どこまでも、どこまでも。天高く、やがて見えなくなってしまうほど。トビという名前は、空高くどこまでも飛んでいくところからつけられたらしいが、カラスはあまりにも空高く追いつめられて、どんな気分だったろう。高所恐怖症で目がまわってしまったのではないかな、などと心配してしまう。

振り返ると、鷲が翼をひろげたような鋭さがすばらしい荒沢岳がどっしりとある。70年前の川崎精雄はというと、駒の頂上で、トビではなくイヌワシを見たようで、だからこそ荒沢岳のことを無意識に、鷲が翼をひろげたような鋭さがすばらしいと形容したのかもしれない。70年たとうが、まったく荒沢岳は、食物連鎖の頂点に立つイヌワシのように威風堂々としていた。

小倉山からいよいよ駒への本格的な尾根筋の登りだ。考えてみたら、銀山平から駒への標高差は1200m以上もあって、今まではだらだら登りだったのだ。まだここから600m以上の標高差がある。しかし、一投足ごと高みを目指すほどに周囲の景色は素晴らしい。この好天は明日も充分もつのだから、なにも焦ることはない。奥深い越後の山々の隅々にまで目を凝らしてみたい。

夏を感じさせるようなあたたかい風が心地よい。生きてるって充実感を感じさせてくれる。駒ノ小屋直下の急斜面は辛い登りのはずだけど、気持ちよく頑張れた。

駒ノ小屋の小屋番さんは双眼鏡で登ってくる登山者を一生懸命見守ってくれていた。最近の登山者は弱くて縦走の人が少ないとかぼやいていたけれど、やって来る登山者がうれしいみたいだ。今日は日帰りで、時間もないのでゆっくりできなかったけれど、今度泊まりに来てみたい。小屋をベースにして中ノ岳へ往復したり、稜線伝いで魅力的な斜面を拾って遊ぶのも楽しそうだ。

6時間半かかった往路も、スキーでの下りは3時間。充分日没に間に合った。

石抱橋に山スキーの車が停車していた。ちょうど下山した私たちを認めると、明日駒へ行きたいと話しかけてきた。下部はちょっとブッシュが大変だけど、絶対いいよと教えてあげた。

2023年4月14日の越後駒ケ岳BCの様子
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