2005年5月4~5日
GW前半は北ア薬師岳へ。後半も天気に恵まれたので、カヤック&スキーで平ヶ岳へ。平ヶ岳はいつも鳩待峠から尾瀬ヶ原を横断して白沢山から県境稜線ルートばかり。
今回のコースは直前に突然インスピレーションがわいてチャレンジ。必要だと思う装備を車に詰め込んで、とりあえず関越道小出インターから奥只見の銀山湖までやって来た。
氷塊の浮かぶ北極海の海をカヤックで渡りながら、氷河を滑る旅なんて、なんて大きな冒険だろう。ちょっと創造力を働かしてみたら、そんな果てしない大きな夢のかけらほどだけど、小さな小さな冒険が実現した。今までにも何度も訪れていた山上の巨大ダム湖だ。
いきなり漕ぐことはできないのだ!海の上以外のシーカヤックは、陸の上の魚みたいなものだというのは先入観である。スキー道具やらキャンプ道具やらで、本体の重量もあわせて60kg以上あろうかというのに、氷のような堅い雪の上ならそりになるのだ。こうして湖までカヤックを引っ張っていく・・・
湖にカヤックを浮かべ漕ぎ出す。ちょっと日本離れしているこの景色。雪山をバックにして氷塊が漂い、行ったことも見たこともない北極海のフィヨルドの海はこんな景色じゃないかと、勝手に想像してしまう。時速7kmで快調に湖の最奥部のベースキャンプを目指す。もう探検家気分なのだ。
大小の沢が入り組んだフィヨルドのような地形。地図だけでは、初めての人ならどこか違う入り江に迷い込んでしまうかもしれない。もちろん自分自身は通い慣れたフィールドだから迷うべくもないけど、今までと違うこの白い景色の中で漕いでいると、未知の海を探検しているかのような夢を見たくなる。
2時間ほどでベースキャンプ地に上陸。湖岸はどこも雪原だった。水位が変化しなければ問題ないけれど、雪解けの多い時期なのでちょっと不安になる。増水しても逃げ場がある場所にテントを張る。
残念なことにエアマットを忘れた。落ちている針葉樹の枯れ枝などをマット代わりにしたが、冷気は防ぎようもなくて一晩中寒くて眠れなかった。翌朝、テントにもカヤックにも霜がびっしり付いていた。
5時にウロコ板スキーで歩き出す。平ヶ岳登山ルートの核心部は、取り付きの細尾根である。最初に取り付いた尾根は見事にはずれ、2時間弱のタイムロス。1本沢をはさんだ向かいの尾根をルートにとる。こちらが狙いのルートだった。
細い尾根をウロコ板やツボでグングン高度を上げる。やがてまわりを一望できるようなってくると、デブリやクラックがいたるところにある右の沢が、帰りの下山ルートとして使えそうなことがわかり一安心。かなりの時間短縮ができる。
なんとか稜線に辿りつくことができ一安心だ。稜線に上がると、そこからは上り下りの緩やかな尾根歩き。クロカンテレマークのスキーヤーにとって、もっとも得意とするところだ。
登っては滑りを繰り返し、いくつもの小ピークを越えていく。歩きなら、とても日帰り登山は無理だろう。目指す平ヶ岳は遙か彼方だ。静かな黒木の森の中を軽快に飛ばしながら、清々しい春風を感じる。
右に左にと遙か彼方に見覚えのある白い山々が眺められる。休憩など朝の5時からほとんど無しで、歩きっぱなしである。しかし、いくらでも歩ける気分だ。目指す平ヶ岳も、やがて眼前に大きく横たわるかのように現れた。
ようやく平ヶ岳が近くに感じられる距離となってきた。ほとんど樹木のない真っ白い大斜面に取り付いて、ウロコをきかせてひたすら登っていく。
平ヶ岳の前衛峰である池ノ岳(2090m)に立ったとき、平ヶ岳の山の大きさに圧倒される。山頂を踏まなくても、この景色を眺めるだけで十分だと思う。
でも、まだ正午まで小一時間あるので、行ってみることにした。
ベースキャンプから6時間45分。登山ルートの取り付き地点から3時間45分、ついに平ヶ岳山頂に立つ。不安と苦闘から解放されて至福のひとときだ。
だだっ広い山頂を歩き回る。カヤックで渡った銀山湖も眺められた。
続く