バックカントリー

シークレットagatsumaBC 2025-1-16

日本海側の各地では大雪を降らせた今回の冬型の気圧配置も、今日は徐々に緩んで絶好のBC日和になりました。標高2000mの稜線の森は、透き通るような青空に落葉松の樹氷が映えて素晴らしい風景で私たちを迎えてくれました。 昨夕から10㎝くらい新雪が積もっていて、昨日までの古いトレースはほとんど埋まっていました。ふと目を凝らして遠くの山を眺めると、富士山もしっかりとわかりました。 午前11時、気持ちよく今日一番の大滑降です。ロケーションは最高でしたが、フカフカの新雪の下は不安定な腐れ雪が埋まっていました。残念ながら両足に均等荷重で慎重にアルペンターンで滑らざる負えない雪質でした。 でも天気とロケーションは最高でした。あたたかい飲み物とデザートのお菓子でゆっくりゲストさんとくつろぎました。 滑る前は、登り返して二本目も楽しもうとゲストさんと話していましたが、この一本で十分ツアーでした。

利尻山をスキーでぐるっと一周chapter4

沓形稜(標高520m)PM3:27~鴛泊登山口PM5:00距離約7.6km 沓形稜下部もデルタ状の広大で緩やかな尾根で、古いモービルとスキーの跡も残っていた。もちろんウロコテレマークスキーにとっても面白そうな大斜面だ。目を凝らすと、右上に避難小屋が雪にほとんど埋もれながらも、そこにあるのがわかった。左下には展望台といわれる施設もわかる。見覚えのある景色や地形なのは、昨年は1日で1周出来ず、この沓形稜から2日目をスタートしたから。その時は天気があまり良くなかったので、今日の晴天は前回の屈辱を晴らすこともできた。 ポン山さんはもうすっかり元気そうで、いよいよ後半最後のこの景色とスキーの楽しさを堪能しているようだ。家内は相変わらず朝一から変わらないマイペースで、しんがり役をきちんと守っている。眼下の海はますます黄金色に輝いて、息を飲む美しさである。 利尻の地形の特徴は、深く刻まれた谷や沢のほとんどが、広くなだらかな裾野へと下るにしたがい河川の地形が無くなってしまうこと。そんなことから、涸れ川のトビウシナイ川が利尻町と利尻富士町の町界に流れているが、上流部がどこなのか、たぶんこの辺なんだろうけど、はっきり特定できない。同じことがオビヤタンナイ沢川にも言える。だから沓形稜と北稜の間の沢が、トビウシナイ川なのかオビヤタンナイ沢川なのか。2万5千図とにらめっこしていると訳がわからなくなってくる。 利尻町と利尻富士町との町界を流れている川をトビウシナイ川と認めると、利尻山頂からダイレクトに落ちる谷は町界なので、トビウシナイ川ということになる。しかし、昨年滑った長官ピークからの谷、利尻避難小屋直下の谷であるが、これは利尻ローカルのポン山さんによればオビヤタンナイ沢川と話していた。これをオビヤタンナイ沢川だと確定すれば、困ったことになる。標高600m付近でこの谷は合流してしまう。二つの川が途中で合流して下流でまた分かれてそれぞれ名前を変えるというのは常識的ではない。沓形稜と北稜の間の川の名前を1つに決められれば、わかりやすいと思うのだが・・・・ ポン山さんの言うとおり、沓形稜と北稜との間の川をオビヤタンナイ沢川と決めるとすると、いよいよ沓形稜からそのオビヤタンナイ沢川を横断である。利尻山頂からダイレクトに落ちる谷が本谷とすれば、昨年ポン山さんと家内と3人で長官ピークから滑った沢は、さしずめオビヤタンナイ沢川左俣と名付けられるだろうか。迫力の本谷を越えるときも、背中を強力に押してくるこの風はまさに神風で、何もしなくてもなかなかのスピードが出るのに驚く。雨傘など開けば斜面も駆け上がっていくほど。 そして小尾根を越えると見覚えのある景色が待っていた。オビヤタンナイ沢川左俣。避難小屋の沢と呼んでもいいかも。古いスキーのあとが残っていた。ここまでくればあとはもうほとんど下りだけなので、かなり余裕で休憩。ポン山さんは持ってきた水の量が足らなくて節約しながら水分補給していたが、なんとか持ちこたえたよう。こちらはちょうど良い量だった。 1つ大きな尾根を越えると、長官ピークからの尾根の途中1100m付近から落ちている沢を横断。この沢がまたスキー向きの良い斜面。また、名前をなんて付けたら良いんだろう?困ってしまう。 ポン山が大きく見えてくる。今朝見たばかりなのに、懐かしい気持ちが湧き起こってくるのは何故だろう。通称ベースと呼ばれている雪原の下で、たくさんのトレースに出会う。もう時間的には、ほとんどの入山者が下山してしまった頃。しかし、これから山に入るテント装備のスノーボーダーの方が上がってくる。仲間3人とこれから4日間の日程だそう。明日からも利尻はまだまだ好天が続きそうで、彼らもまた懐かしい思いでポン山を見ながら山を下りてくることだろう。 湧水を汲みに来たポン山さんの知り合いの方を、ゴール間近のところで追い抜く。どこへ行ってきた?1周した!なんて会話になり、いきなり利尻を1周してきたと答えても、普通の人はあまりピンと来ないだろうなと思った。午後5時ジャスト、今朝スタートした鴛泊登山口にゴール。 ゴールしてもすぐには1周達成の実感がなく、じわじわと込み上げてくるに違いない。大げさな言い方だけど、1年間あたためてきた計画が達成できた。この後ポン山さんと夜は魚勝で盛大に祝杯をあげるのだ。

シークレットkuniBCガイド2025-1-13

南岸低気圧の大雪予報も出ていましたが、想定外のパウダー日和となりました。昨日から夜半のうちに10センチくらい降った新雪の上に、なんと今日の午前中に20センチ近くまた降リました。 昨日偵察していた目的の斜面は、まだ視界不良で良く見えません。それに今日のような降雪中は、あまりにも危険で残念ながら次回です。 メローな斜面でも、浮遊感いっぱいなパウダースノーを楽しめました。(昨日の偵察時の写真) そして2本目のコースへ移動。天気予報では晴れマークが出ていましたが、標高の高いところではなかなか雲が切れませんでした。 午後1時、小さなピークに立ちました。今日はこの一本のために頑張ってハイクアップしました。今シーズンで最高のパウダーでした。 誰にも遭わないバックカントリーでした。

シークレットagatsumaBCガイド偵察2025-1-12

低温続きのおかげで今年は例年とは違いサラサラのパウダースノーが長持ちしてくれているのかなと、ハイクアップしながら思いました。今夜からまた冬型の気圧配置になるようで、明日午前中降雪予報。10センチくらい積もってほしいと期待します。 野反の山々が遠望できました。白砂山はその名のごとく真っ白の山なので良く目立ちます。 今日は新しいコースを開拓したくまだ足を踏み入れていないエリアの森の中を彷徨ってみました。雪がいいので楽しい偵察でした。

シークレットkuniBC偵察2025-1-11

今日もいい雪でした。標高2000mの稜線は薄い雲がかかっていたので視界不良だったのかも。標高1800m以下の偵察だったので、風も穏やかでまさにBC日和でした。ハイクアップの途中で先行者のラッセル発見。シークレットkuniの隣人イノシシ君のようです。 お正月のスノーシューツアーの時に訪れた熊棚の木のところでシールを剥がして軽く一本。そして急壁のあるメインリッジをシール登行です。 年末よりも30センチくらい新雪が増えたようです。標高1600mくらいから笹薮も雪の下に埋もれて素晴らしいパウダーコンデョションでした。 2回登り返していつもと違うラインでメローな斜面を楽しみました。

シークレットagatsumaBCガイド偵察2025-1-9

今シーズン一番のフカフカのパウダースノーに恵まれました。静かな森の中を歩きながらたくさんの樹々とお話をすることが出来ました。GPSが無かったらおとぎの森のような原生林の奥へと迷い込んで雪女にさらわれて帰ってこれなかったかもしれません。 大きな木がいくつも根元から倒れて雪に埋まっているところに出ました。スキーといえどもここを通過することは困難でした。太い幹の上に深い雪が積もっても落とし穴がそこら中にあるのがわかります。そんなところに落ちたら這い上がることがいかに困難か想像できました。これらの倒木は2019年秋の台風19号の仕業でしょう。すさまじい自然の傷跡に出逢いました。 ダケカンバの巨樹にも出逢えました。今は完全にコメツガやオオシラビソの針葉樹たちに支配されてしまいましたが、その中で偶然の陽の当たる環境に恵まれてたくましく生き残っているのでしょう。 誰にも遭わない静かな針葉樹の森の中を彷徨できるようなバックカントリーも好きです。帰りは大斜面に豪快なシュプールを描けるような滑りはまったくありませんでしたが、フカフカのパウダーツリーランをゆっくりと楽しみました。

利尻山をスキーでぐるっと一周chapter3

マヤオニ沢(標高520m)PM0:27~沓形稜(標高520m)PM3:27距離約6.9km マヤオニ沢の対岸の尾根に上がるルートは、見た目通り急斜面だったけど、何度か斜登行を繰り返してウロコだけで登り切った。ポン山さんが心配だったけど、後ろからしっかりついてきてくれたので大丈夫そう。でも、これからもまだまだ深そうな沢をいくつも越えていかなければならないので、安心は出来ない。 ここでちょっと趣向を変えて斜滑降を長めにとって気分転換。下りが続くと気分的にも楽になる。結局はその分登り返しが待っているのだけれど・・・ 谷を横断して尾根に上がるとそこには、新しい景色が必ず広がっている。ずっと平原を進むだけだったら楽ちんだけど、きっと景色の単調さにうんざりするかも。だから尾根の向こうに待っている景色に胸をときめかせて、一歩一歩前へ進むことが利尻スキー1周旅の醍醐味だ。苦あれば楽あり楽あれば苦あり、ではないが、1周スキー旅は人生そのものなのだ。 振り返ると、少しずつ越えてきた景色が遠のいていく。今までずっと目印にしていた仙法志の街並みや仙法志ポン山も、さよならである。ちょっと名残惜しかったりもするけど、確実に前へ進んでいるという充実感が気持ち良くもある。気がつくと、いつの間にか今までの強い向かい風がなくなっていた。 何度目か谷を越えて尾根に上がると、面白いものが待っていた。なんだあれ?て、つぶやいてみたら、ポン山さんが、アワビ岩だと教えてくれた。まさに岩にへばりついたアワビである。海岸沿いの道路からは見えないので、利尻に住んでいる人にもあまり知られていないかもしれない。この辺りもまさにスキー向きの斜面なので、ポン山さんにはアワビ尾根とかアワビ谷とか、わかりやすい名前を付けて欲しいところだ。 雪がない時期もアワビに見える岩なのかポン山さんに尋ねると、ポン山さんが前に一度だけ見たときは雪のない時期だったそうで、雪があろうとなかろうとアワビに見える文句なしアワビ岩だそうである。アワビ谷で少し癒されてみんな元気が出てきて、ポン山さんにも笑顔の余裕が見られるようになってきた。 大空沢は広くて明るい谷で、たくさんのモービルの跡が残っていた。この谷も標高1000m以上までスキーで登って行けそうなので、いつかどこまで行けるか詰めてみたいところ。地図を見ると、この大空沢の湧水が海岸沿いの道道脇にある麗峰湧水という名所。いつも通り過ぎるだけで、まだ口にしてみたことがない。 大空沢から見える山頂への険しい稜線は、沓形稜に違いない。そう思うとはやく沓形の町並みが見えてこないかなと、心がはやる。時刻は午後2時過ぎなので、ペース的には遅くもなく速くもなくだ。 大空沢の急な斜面を登る。登り上がると、またそこには新しい景色が広がる・・・ シサントマリ字界沢付近は、標高500mくらいを進む。マヤオニ沢と大空沢の区間は複雑な地形だったが、この辺りは快適な斜滑降と斜登行の連続で、効率的に前進している感じ。 そしてついに、彼方に礼文島が突然見えたときは、みんなうれしそうだった。また海岸線には、利尻高校の建物らしきものも見えて、いよいよ沓形の町並みも見えてくるはず。ポン山さんがあれは神居ポン山と教えてくれる。 いつしかお日様も西に傾きはじめ、海が黄金色に輝いていた。そして私達にとっては、神風が吹く。この頃風向きは追い風となり、ザラメが少し凍り始めてスキーが滑るようになって、何もしないでも疲れた体をどんどん前へ進んでくれるようになる。 深い沢を横断するも、この神風のような追い風のおかげで苦にならないくらいだ。

シークレットkuniBC偵察2025-1-4

今日は登山口でイノシシの罠をかけに来ている地元の猟師さんと出逢いました。山里近辺で見かけるそれらしき動物の足跡は、やっぱりイノシシだと確信できました。大雪の今シーズン、これまで積もった雪はしっかり締まって、さらに昨夜から夜半にまた新たに積った新雪のおかげで、今日はいいコンデョションです。ハイクアップのラッセルは、下から上までずっと軽くて快適でした。 午後になっても気温が上がらず雪は腐らなかったので、ラッキーなことに帰りもずっと快適な滑りを楽しみました。 それでも目指すメローなスロープがあるオムスビ山まで3時間のハイクアップです。せっかくなので登り返して2本滑りました。 秋に訪れた湿原の池塘は厚い氷が張って数十センチの雪の下でした。平兵衛池にも寄り道しました。 来週半ばもまたパウダーの期待大です。

スノーシューガイド偵察2025

大晦日から元旦にかけてまた10センチほど新雪が積もったようです。明日のガイドのためにどんなコースにしようか偵察してきました。森の獣たちの新しい足跡がたくさん残されていましたが、今日もウサギに出逢いました。しかも写真撮影に半分成功です。 完全ではないのが残念で、熊笹から耳が伸びているのがわかりますか。しばらく動かず逃げなかったので撮影できたのですが、近くに寄ろうとしたら逃げられました。 標高1400mを超えると少し吹雪いてきたのでこの辺りでミズナラの巨木巡りコースの目星をつけて偵察終了。前から気になっていた、短いけどちょっと滑っておきたいすり鉢状のスロープを覗きに行きました。 スノーシューガイドでも偵察はウロコテレマークスキーです。スピーディーに動けるのでいつもこちらです。 いい雪で気持ち良かったので、登り返して早お昼をして下りました。もちろんスノーシューの本番ガイドではスノーシューで雪の森探検を楽しみます。

利尻山をスキーでぐるっと一周chapter2

アフトマナイ川(標高322m)AM9:45~マヤオニ沢(標高520m)PM0:45距離約7.1km アフトロマナイ川もまた山頂からのエクストリームスキーヤーの滑降記録があるらしい。私達が休んでいる場所はとてものどかな雰囲気が漂っていて、山頂直下の荒々しさとは別世界である。さてゆっくり休憩もしていられず、次の目標地点である南稜を目指して歩き出す。まだ3人とも調子が良い。 しばらくは森林限界下部の森の中を、谷を跨ぎ尾根を越えるようにして斜面をトラバースするように進む。日が当たるところはザラメが緩みだす。まだ凍っているところで斜滑降し、融けているところで斜め登りをすると効率的なので、なるべくそのようなルート取りを心がける。これからの長い行程を考えると、ついつい心がはやり気味になってしまうが、やはり冷静にマイペースでコツコツ進まなければと思う。時々樹林越しに垣間見える東稜下部のスキー向きの美味しそうな二つの大斜面が、滑ったら気持ちよさそうだなと、 心を和ませる。 昨年の記録ではヤムナイ沢を標高330mで横断していて、今回はもう少し上流で横断するよう意識的に高度を上げるようにトラバースしていく。なぜなら少しでも1周の距離を短くして時間短縮できるからと考えるのだが、この辺が匙加減の難しさでもある。高度を上げるには登りで体力を消耗したり、沢が深くなったりするリスクもある。やがて眼下の海岸に灯台が現れた。利尻ローカルのポン山さんがすぐに石崎の灯台だと教えてくれる。鬼脇はそのすぐ先である。ポン山さんによると、石崎の灯台が見えた時、自分たちが確実に進んでいることをようやく実感できて、1周は出来きそうだなと初めて自信が持てたそうだ。しかしまだまだ、1周の3分の1といったところである。家内が1周のどれくらい来たのか何度も尋ねてきたが、「どれくらいかなぁ。」と濁す。こういう質問に答えるのも、質問者の心理の影響を考えると回答の匙加減が難しい。 だだっ広い東稜下部をトラバースしていくと、今まであまり風を感じなかったのに、急に正面からの風が強くなってきた。こんなこともまた、自分たちが時計回りに円を描きながら確実に進んでいることを実感させてくれる。 やがて大きな沢床でそれとすぐわかるヤムナイ沢が現れた。沢床まで気持ちよくテレマークターンで滑り降りる。いくつもの新しいモービルの跡が残っていて、上の方でエンジン音が聞こえてくる。急な対岸の良いところを狙って斜めにウロコを利かせて登る。 いよいよ南稜下部の一端に立つ。南稜と仙法志稜とを隔てるマヤオニ沢まで、南稜下部はデルタ状に裾野を広げているが、もちろん平原になっているのではなく、複雑に支沢が入り込んでいてルートは単調ではない。昨年もこの南稜下部では強烈な向かい風に悩まされ、地図を広げることができなくて困った。今年はこの辺りの地形がだいたい頭に入っているので、地図を見ないでなるべく高度を上げるように進路をとった。そして、風の弱いところでお昼休憩にした。 尖った塔のような岩峰が、日本離れした特異な景観で迫ってくる仙法志稜を眺めながら、おにぎりの美味いこと。三つ目は何とか思いとどまり、3時のおやつにとっとく。今のところなかなか快調に進んできているので、気分的には余裕である。しかし何があるかわからないので、今日はヘッドランプも覚悟で行きましょうとお互いに意思確認。 正面にヤムナイ沢の夏でも万年雪が残るという源流部が見える。スキーでどの辺りまで詰めていくことが出来るか、いつか自分の足で確かめに行ってみたい沢が、利尻山の周りにいくつもあるが、このヤムナイ沢もそのうちの1つである。 まだ半分も来ていないので、お昼休憩をあまりゆっくりもできず先を急ぐことにする。昨日はガスでホワイトアウトのこの南稜下部を、一人で標高700mまで往復したので、そのトレースと交差する地点を楽しみにしていると、あったあった、そこにあった。晴れていればこんな雄大な景色の中を歩いていたのかと思うと、ホワイトアウトの中を歩くことがなんと空しいことか。昨日はカラスが近くまでよく寄ってきたけど、何故だったんだろう・・・・ 私達より上部の南稜下部の大斜面に、たくさんの人影が豆粒のように見えた。どうやらこちらの方に滑り降りてくる様子。彼らの登りのトレースをどこにも見た覚えが無くて、疑問が一瞬浮かんだけど、すぐに納得。近付いてくると、アルペンスキーヤーとボーダーの混成で、みんな楽しそうに滑っている雰囲気が漂っていた。テレマークターンをしているテレマーカーを探したけど、見つからない。 鬼脇ポン山方向へと滑り降りていった彼らとすれ違い、私達はひたすらトラバースを続ける。突然後ろのポン山さんから、足が痙りそうだと声がかかる。緊急事態である。立ち止まって、足の様子を見る。以前山岳マラソンに初めてエントリーして、自分も足を痙った経験があるので心配する。しばらく休憩すると、足をかばいながら無理せず行けば大丈夫そうだというので、ちょっとスピードをゆっくり目にして前進することにする。ヘリかモービルで救助してもらうなら別だけど、この場所から自力で道路まで下るとすれば、下山も前進も気分的には変わらないかも。 マヤオニ沢まで、眼下にオタドマリポン山、メヌウショロポン山、仙法志ポン山などが眺められる。今年の豊富な残雪量ならまだ楽にアプローチできそうである。今回のルートは昨年より標高100mほど高いところを進んでいて、昨年よりずっと効率的なルートである。ただ残雪状況で尾根上のハイマツなどが出てくると、進路が妨げられたりもするので、やはりその時その時の状況判断になるだろう。 その後もポン山さんは何度か足が痙りそうになって、その度に少し立ち止まったりしたけれど、なぜだか足の調子が少しずつ回復してきたようだった。時計回り1周というのは、つねに同じ方向で登りが続いたりするので、きっとふだんあまり使わない筋肉を酷使して痙攣するのかも知れない。時々快適な斜面のダウンヒルなどがあったりして、こわばった筋肉がほぐれたりするのが良かったのかも。なんにしろポン山さんの、今回のスキー1周にかける強い思いがあってのことではあるが。 そろそろマヤオニ沢だろうと思ってもなかなか辿り着かなくてちょっと精神的に疲れた頃、今度こそマヤオニ沢だと間違いなく確信できる地点に出た。標高600m付近から見下ろすマヤオニ沢は広々としてなだらかな雰囲気が漂っているが、対岸の尾根に雪庇が出ていて一瞬どうしようかと迷う。雪庇がなくなる下流方向に高度を下げるルートをとれば、問題は簡単に解決できるがそれはもったいない。よく見ると一部雪庇の切れている箇所を見つけ、急斜面そうだけどそこを突破口に狙うしかないと判断した。 まずはマヤオニ沢の沢底へ、優雅なテレマークターンで気持ちよくダウンヒル。斜登行と斜滑降の繰り返しの利尻山スキー1周では、ウロコテレマークスキーの楽しさを最高に感じるひとときである。 仙法志稜と南稜の絶壁に挟まれたこのマヤオニ沢は、私達の出発地点である鴛泊登山口のちょうど反対側。つまり1周の半分進んだということ。ポン山さんが、ここから先はほとんど行ったことがないので、どんな景色が見られるかを一番楽しみにしていたところだそうである。確かに仙法志と沓形の道道の区間は、車からは高い崖で利尻山がまったく見えないので、斜面の様子がよくわからずローカルスキーヤーでも入る人が少ない。私達にとってもこの先は、時間切れで仕方なく沓形への下降ルートを余儀なくされた昨年の経験があるので、この先にどんな景色が飛び出してくるか、とても楽しみなのである。