2008年4月5~6日
六合村・開善学校~上信国境稜線~岩菅山~烏帽子岳~笠法師山~切明温泉
地図を眺めながら未知のスキールートをイメージするのは楽しい。胸が躍るようなドキドキ感が高まり、休みの日が待ち遠しくなる。まして、そのルートが多くの山岳スキーヤーにも注目されず、記録も見たことがなければ、秘かに宝物を見つけたような気分だ。
裏岩菅山から秋山郷の切明温泉までの稜線は、スキー縦走としての記録を今まで見たことがなかった。するとブナ文庫という山岳図書蒐集家でもある山スキーの大先輩が、「スキーはないけどワカンならあるよ。」と、昭和42年の岳人242号の記事のコピーを送ってくれた。長野電鉄山岳部の記録で、小林紀美氏が執筆している。2月に、ワカンで東舘山から切明まで2泊3日で歩いていた。記録の終末で、筆者はこの縦走ルートがスキー向きでないと述べていた。
岩菅山から切明温泉へのスキー縦走は、春の締まった雪の時期なら、スキーを使えば1日でトレースできるにちがいない。そのために何年も前から、このエリアのルート偵察を地道に行ってきた。大高山登山口の馬止から国境稜線に入山して、ダン沢の頭から赤石山、さらに岩菅山くらいまでは身近なエリアなので頻繁に訪れることが出来た。しかしながら秋山郷の切明温泉から笠法師山のスキールート偵察は、秋山郷までの車のアプローチが大変だった。
この積雪期の笠法師山の記録もまた見たことが無かったので、何度か訪れてのゼロからのコース開拓だった。細尾根の迷いやすいコースだが、スキーを使うことによって、よりスピーディーに安全に下山出来ることがわかった。
スキー縦走の核心部は、なんといっても裏岩菅山と烏帽子岳の間にあるカニの横ばいの通過だ。ここは無雪期に一度縦走したことがあった。細尾根の稜線は積雪期に大きな雪庇が出来るといやらしそうだ。スキー縦走はぶっつけ本番になる。ここでどれだけ時間を費やすかにより成否が決まるのかなと思った。
決行の時は突然訪れるもので、2日前に週末の天気が安定することが分かったので、なんとなくやってみようということになった。
1日目、旧六合村の林道入り口から鷹巣尾根ルートで入山。赤石山の手前から寺子屋峰をショートカットして岩菅山手前のノッキリ付近へ魚野川横断。ノッキリでテント泊して2日目秋山郷へ縦走。カニの横ばいはシートラで稜線西側の斜面を難なく通過。これでもう難所はないと楽観していたらとんでもなかった。笠法師山手前に細尾根の急斜面が一ヵ所待ち受けていた。空身で登り細引きロープでザックやスキーを引き上げたりして、ちょっと苦労した。それでも予定通り明るいうちに下山。切明温泉の湯に浸かりながらバックカントリースキーツアーの小さな達成感に大満足した。