アウトドア野郎のLPジャズ旅

Lovers…/キャノンボール・アダレイ

クリントイーストウッドの映画でキャノンボールアダレイのバンドが演奏しているシーンが突然出てきてびっくりしたことがあります。ジョーザビヌルが参加している時期です。その時の演奏がかっこよくて、中古レコード屋さんでなるべく晩年のキャノンボールのレコードを漁っていたら、ゲットできたのがこれです。これは、ザビヌルからジョージデュークにメンバーチェンジしていますが、まさに遺作となった作品です。他の参加ミュージシャンも豪華です。今、ネットで調べたらクリントイーストウッド初監督作品、恐怖のメロディという映画で、実際にモントルージャズフェスティバル(1970年9月)に出演している演奏の中で撮影したそうです。余談ですが、同じように生のジャズライブが映画で出てくるのって結構他にもあるかもです。ひとつ思いついたのは、男はつらいよシーリーズで、第35作「男はつらいよ・寅次郎恋愛塾」で六本木ピットイン?で演奏する大野エリさんと井上淑彦さんがちらり出てきました。

Dynamics/ブルースフォアマン&ジョージケイブルス

アートペッパーとのデュエットでも素晴らしいピアノを弾いていたジョージケイブルスに魅かれて、しかもコンコードレーベルで地味ですが聴いたことのあるギタリストとのデュエットということで即買い。もちろん中古盤です。狙い通り、ピアノとギターの上品で美しいインタープレイが楽しめる一枚です。

V.S.O.P/ハービー・ハンコック

10代の頃はもっぱらカセットテープに録音してジャズを愛聴することが多かったです。はじめの頃は、近所のジャズ好きのお兄さんのコレクターからだったり、FM放送をエアチェックしたりでした。やがて貸しレコード屋というのが流行るようになってからは、スライ&ザファミリーストーンとかシカゴとかジャズ以外のジャンルなどもチャレンジ的に借りて録音し、幅広く聴けるようになりました。でもまぁ、振り返ってみると、今みたいにネットで手軽に世界中の音楽が聴ける時代とは比べ物にならないくらい不便な時代でした。ところで、カセットテープの種類は単純なものではなく、「ノーマルポジション」(TYPEI)、「ハイポジション」(TYPEII)、「メタル」(TYPEIV)などの種類があって、お気に入りのレコードはちょっと値段が高いハイポジションのカセットに録音していました。この2枚組のレコードは、たしか少し高額なTDKの90分SAテープに録音してました。録音クレジットをインデックスカードに色分けで丁寧に書いて、他よりもちょっと格上の扱いというか聴き方でした。A面のピアノイントロダクションから処女航海へと感動的に演奏されていく演出は、今聴いてもやっぱり感動モノです。このレコードはずっと後になって、中古で手に入れたものです。

live in tokyo/サドジョーンズ・メルルイス&ザジャズオーケストラ

ビッグバンドはあまり聴かない中で、ギルエバンスとサドメルの中古盤はソロイストの演奏が気になるのでいくつか持ってます。サドメルのライブインジャパンもその中の一枚。若き日のビリーハーパーがメンバーに入っていますが、ソロはほんの少し聴けるだけです。でも最初の一音から彼らしいフレッシュなフレーズが飛び出してきて安心しました。サドメルのいいところは、サドジョーンズの斬新なオーケストレーションとメルルイスのかっこいいドラム、各セクションからの個性的なソロが三位一体で楽しめるところです。ライブイントーキョウは全演目から選りすぐりの5曲でしょうが、あまりの名演奏ばかりに他の曲も全部聴きたくなります。サドメル・オーケストラはその後サドジョーンズが離れてメルルイスジャズオーケストラとして、NYビレッジバンガードの月曜の夜に出演していました。21のNY滞在中に一度生で聴いているのですが、メルルイス以外のメンバーで誰が出ていたとか忘却の彼方です。

Hold the line/スティーブ・グロスマン4

スティーブグロスマンとの最初の出逢いは、マイルスのジャックジョンソンです。近所のジャズ好きなお兄さんからレコードを借りて、カセットテープに録音して良く聴いていました。1970年録音のジャックジョンソンから14年、このレコード、ホールドザラインは1984年録音です。スティーブグロスマンの演奏はオーソドックスなスタイルに変貌して別人に近いくらいです。ソニーロリンズを彷彿するような、いやいやソニーロリンズと一瞬聞き違えるくらい貫禄の演奏です。でもちょこっとコルトレーンだったり、スティーブグロスマンらしいフレーズもあったりできるので安心します。ジャケットにサインらしき赤ペンが書かれていますが、よく見るととあります。吉田正弘とは、このアルバムでもドラムをたたいている吉田正広氏です。スティーブグロスマンのサインではなかったです。

As Long As There’s Music/チャーリーヘイデン&ハンプトンホーズ

このアルバムは、数あるピアノとベースのデュエット作品の中で大好きな1枚です。中古レコード店で見つけられた時はラッキーな出逢いでした。48歳で1977年5月22日に逝去したハンプトンホーズの最晩年の作品で1976年8月21日録音のものです。生前ハンプトンホーズと親交のあった油井正一氏が、日本盤のライナーノーツで波乱万丈なハンプトンホーズの生涯と音楽について文章を寄せています。そんなこととは関係なく、二人の音楽はただただ素晴らしいハーモニーとインタープレイの連続です。自然と音楽に酔いしながら、ゆったりとした時間が過ぎていきます。48歳の死は、チャーリーパーカーやジョンコルトレーンほどではなくても若過ぎます。まだまだ新境地のピアノ作品を作り続けてくれていたかもです。

peace/アイラ・サリバン

テナーサックス奏者がソブラノやアルト、フルートなどを持ち替えて演奏することは普通に見られますが、さらにトランペットやフリューゲルホーンも演奏するジャズミュージシャンは珍しいです。チャーリーパーカーの弟子だったトランペットのレッドロドニーとの双頭クインテットのレコードからアイラサリバンを知りましが、こちらはアイラのソロ名義のアルバムです。1978年録音ですが、輸入盤コーナーで見かけた覚えがなく、リアルタイムでは全く知りませんでした。ずっと最近になってから中古版で手に入れたものです。まずは、アルプスかヒマラヤの高峰氷河の山をイメージしたジャケットに魅かれます。ホレスシルバーの名曲ピースが安らかな雰囲気で演奏されていますが、アルバム全体のイメージも宮沢賢治のやまなしの12月の世界のような、なんだか平和な感じを受けます。

LEVELS AND DEGREES OF LIGHT/ムハール・リチャード・エイブラムス

リチャードエイブラムスは、AACM(創造的ミュージシャンの進歩のための協会)の創設者で、このアルバムは1967年に録音された初リーダー作のようです。これぞフリージャズ、まさにフリージャズと呼べる作品で、全部聴き通すにはかなりの集中力が必要です。AEC(アートアンサンブルオブシカゴ)やチコフリーマンのレコードで以前から知っていましたが、謎めいたフリージャズの重鎮といった彼のイメージを勝手に膨らませていました。デルマークレーベルクからのこのレコードは今までまったく知らなかったのですが、最近になって偶然ある店で出逢い手に入れました。ジャケットデザインもいい感じで、いわゆるジャケ買いも半分あるかな。中古なのに新譜同様に美盤なのは、前オーナーも針を落としていないのかなと勘繰りたくなります。

輝く水/エグベルト・ジスモンティ

おっと、2025年お正月の初レコードはこれが来ましたか!ときどき無性に聴きたくなって、どこにあったっけってレコード棚を探し疲れたりするレコードです。ジスモンチとの出逢いは、実はECM第2作の輝く陽の方が先です。でもこちらはカセットテープでレコードは持っていません。NYのレコードショップで、たまたま1ドルのセールだったと記憶しています。この作品で独特のピアノやギターサウンドを奏するジスモンチの音楽に驚きました。今回紹介しているこちらはECM第1作で、その後いつだか覚えていませんが中古で購入しました。ナナ・ヴァスコンセロスとのデュエット作品です。ジスモンチの奏でるピアノやギター、ウッドフルートからは、アマゾンの森のすべての生き物たちの息遣い、陽光や水の輝きなど、ブラジルの大地の大自然が音楽として奏でられているようです。クラシック的ですがとてもジャズを感じさせる独特の世界観を創り出す多彩なサウンドには癒されます。

THE CUTTING EDGE/ソニーロリンズ

1974年、スイスのモントルー・ジャズ祭に出演した際の実況録音盤。日本人ギタリスト増尾好秋がクレジットされていて興味を引きます。70年代後半から80年代にかけてのソニーロリンズは、来日コンサートもけっこうあったりして何度も聴きに行きました。初めて買ったロリンズのレコードは、A Night At The “Village Vanguard”だったかWay Out Westだったか。とにかく50年代のソニーロリンズから聴き始めましたが、70年代のマイルストーンからの諸作品もお気に入りです。このThe Cutting Edgeも愛聴盤です。ロリンズ節ともいえるアドリブフレーズからいつも元気をもらってます。