アウトドア野郎のLPジャズ旅

As Long As There’s Music/チャーリーヘイデン&ハンプトンホーズ

このアルバムは、数あるピアノとベースのデュエット作品の中で大好きな1枚です。中古レコード店で見つけられた時はラッキーな出逢いでした。48歳で1977年5月22日に逝去したハンプトンホーズの最晩年の作品で1976年8月21日録音のものです。生前ハンプトンホーズと親交のあった油井正一氏が、日本盤のライナーノーツで波乱万丈なハンプトンホーズの生涯と音楽について文章を寄せています。そんなこととは関係なく、二人の音楽はただただ素晴らしいハーモニーとインタープレイの連続です。自然と音楽に酔いしながら、ゆったりとした時間が過ぎていきます。48歳の死は、チャーリーパーカーやジョンコルトレーンほどではなくても若過ぎます。まだまだ新境地のピアノ作品を作り続けてくれていたかもです。

peace/アイラ・サリバン

テナーサックス奏者がソブラノやアルト、フルートなどを持ち替えて演奏することは普通に見られますが、さらにトランペットやフリューゲルホーンも演奏するジャズミュージシャンは珍しいです。チャーリーパーカーの弟子だったトランペットのレッドロドニーとの双頭クインテットのレコードからアイラサリバンを知りましが、こちらはアイラのソロ名義のアルバムです。1978年録音ですが、輸入盤コーナーで見かけた覚えがなく、リアルタイムでは全く知りませんでした。ずっと最近になってから中古版で手に入れたものです。まずは、アルプスかヒマラヤの高峰氷河の山をイメージしたジャケットに魅かれます。ホレスシルバーの名曲ピースが安らかな雰囲気で演奏されていますが、アルバム全体のイメージも宮沢賢治のやまなしの12月の世界のような、なんだか平和な感じを受けます。

LEVELS AND DEGREES OF LIGHT/ムハール・リチャード・エイブラムス

リチャードエイブラムスは、AACM(創造的ミュージシャンの進歩のための協会)の創設者で、このアルバムは1967年に録音された初リーダー作のようです。これぞフリージャズ、まさにフリージャズと呼べる作品で、全部聴き通すにはかなりの集中力が必要です。AEC(アートアンサンブルオブシカゴ)やチコフリーマンのレコードで以前から知っていましたが、謎めいたフリージャズの重鎮といった彼のイメージを勝手に膨らませていました。デルマークレーベルクからのこのレコードは今までまったく知らなかったのですが、最近になって偶然ある店で出逢い手に入れました。ジャケットデザインもいい感じで、いわゆるジャケ買いも半分あるかな。中古なのに新譜同様に美盤なのは、前オーナーも針を落としていないのかなと勘繰りたくなります。

輝く水/エグベルト・ジスモンティ

おっと、2025年お正月の初レコードはこれが来ましたか!ときどき無性に聴きたくなって、どこにあったっけってレコード棚を探し疲れたりするレコードです。ジスモンチとの出逢いは、実はECM第2作の輝く陽の方が先です。でもこちらはカセットテープでレコードは持っていません。NYのレコードショップで、たまたま1ドルのセールだったと記憶しています。この作品で独特のピアノやギターサウンドを奏するジスモンチの音楽に驚きました。今回紹介しているこちらはECM第1作で、その後いつだか覚えていませんが中古で購入しました。ナナ・ヴァスコンセロスとのデュエット作品です。ジスモンチの奏でるピアノやギター、ウッドフルートからは、アマゾンの森のすべての生き物たちの息遣い、陽光や水の輝きなど、ブラジルの大地の大自然が音楽として奏でられているようです。クラシック的ですがとてもジャズを感じさせる独特の世界観を創り出す多彩なサウンドには癒されます。

THE CUTTING EDGE/ソニーロリンズ

1974年、スイスのモントルー・ジャズ祭に出演した際の実況録音盤。日本人ギタリスト増尾好秋がクレジットされていて興味を引きます。70年代後半から80年代にかけてのソニーロリンズは、来日コンサートもけっこうあったりして何度も聴きに行きました。初めて買ったロリンズのレコードは、A Night At The “Village Vanguard”だったかWay Out Westだったか。とにかく50年代のソニーロリンズから聴き始めましたが、70年代のマイルストーンからの諸作品もお気に入りです。このThe Cutting Edgeも愛聴盤です。ロリンズ節ともいえるアドリブフレーズからいつも元気をもらってます。

play bach special Vol.2/ジャック・ルーシェトリオ

FMラジオでバドパウエル特集をやっていて、その中でバドオンバッハを初めて聴いて、バッハだろうがクラシックだろうがなんでも自分流に自由にかっこいい演奏をするバドが大好きなピアニストになりました。出逢いは有名なクレオパトラの夢ではなくこっちでした。その後ジャックルーシェのプレイバッハを知りましたが、このレコードはG線上のアリアが入っているので思わず中古でしたが手に入れました。でもあんまり聴くことなくて、今回久しぶりにA面B面聴き通しました。バドパウエルとはまったく違った上品なスイング感で、とても心地よい演奏です。

Love Devotion Surrender/サンタナ・マクラフリン

高校時代のクラスメイトにサンタナ好きのギター少年がいて、お互いの好きな音楽について語り合った思い出があります。1981年のライブアンダーザスカイでサンタナが大阪万博のステージでハービーハンコックのバンドと一緒に演奏しました。その時に初めてサンタナを生で聴きました。そういえば記憶違いでなければ、ハービーハンコックの器材が電気系統のトラブルで長時間復旧せず待たされたっけ。このレコードはギター好きの弟が購入して家にあったものです。ずいぶん後になってから何気なくレコードプレイヤーに載せて聴いてみたら、いきなりコルトレーンの至上の愛が始まってのけぞりました。1973年発表。マイルスのバンドで世界的に名を馳せたマクラフリンとの共演に、この時ようやくサンタナが何者なのか知りました。

Salt Peanuts /スーパーサックス

スーパーサックスの第2作で1974年録音。だいぶん後になって中古で買ったもので、リアルタイムでは縁のないグループでした。チャーリーパーカーの音楽自体も、図書館でCDを借りて聴くようになるまで出逢いがほぼ無くてあまり聴いてこなかったです。ただ、直接聴かなくてもほとんどのジャズがチャーリーパーカーのビバップとのつながりあるので、例えば渡辺貞夫のレコードからチャーリーパーカーを勝手に理解しているような気にもなっていました。クリントイーストウッドの伝記映画バードをTV放送で観た時は、今までのチャーリーパーカーのバラバラな知識が一つにつながって、目からうろこでした。ジャケットはなんかダサい感じですが、音楽は超お洒落です。

spirituals/デビッド・マレイ

1988年1月、日本のDIWレーベルからの作品。レコードの帯には、「マレイの原点、ゴスペル、スピリチュアルの世界に挑戦した魂の詩。」とあります。発売は1990年くらいなので、どんどんレコードの新譜が少なくなって、CDが主流になっていた時代です。そんな時代背景の中で、1曲目のアメイジンググレースの選曲に魅かれて発売と同時に新譜で買いました。この時代の日本はまさにバブル経済の真っ只中でした。悠雅彦氏のライナーノーツを読むと、逆にニューヨークのジャズ的状況は不景気でジャズメンにとっては厳しい時代だったようです。そういえば山手線内の土地でアメリカ全土が買えるとか、ゴッホのひまわりが53億円で落札されたニュースが話題になったりとか、バブル時代の日本はジャパンマネーの勢いが最高潮でした。今から思うと、そのおかげでこのような作品をいくつも送り出していてくれたのかもしれません。でもこの頃はもうデビッドマレイの演奏に何か物足りなさを感じていました。

chare in the sky/ミンガス・ダイナスティ

チャールズミンガスは、1979年1月5日に56歳で逝去。没後ミンガスゆかりのメンバーによるバンドが結成され、各地で演奏される中での7月9、10日に録音された追悼盤。ジョニミッチェルのミンガスも7月にリリースされて、一般的にはこちらの方がミンガス追悼盤としてはあまりにも有名過ぎます。当時リアルタイムでミンガスダイナスティは聴いていなくて、だいぶん後になってから中古版で購入したもの。ジョニミッチェルのミンガスは話題になったし、たしかすぐに国内版でも発売されてFMラジオで頻繁に流れたし、貸しレコード屋ですぐに借りることもできて、良く聴いたものです。ミンガスダイナスティの方も、豪華メンバーによる最高にご機嫌な演奏です。A-2アチャエアーインザスカイとB-1スイートサッカーダンス、B-2デモインのお洒落賭博師の3曲は、ジョニミッチェルの追悼盤にも収録されていて、ジョニとミンガス共作もしくはミッチェルの曲です。