ノゾリキスゲが満開の見頃な野反湖から歩きだします。昨夕からの激しい雨も朝方にはすっかり止んで穏やかな朝です。

歩き始めると、草藪の露がすぐに足元をびしょ濡れにさせてくれました。まだそれほどまで伸びていなくてスパッツだけで大丈夫かなというのは甘い考えでした。たまらずレインパンツを履きます。宮次郎清水は枯れていました。ホソバミゾホウズキの花を楽しみにしていましたが、どうだっけ?これから咲くのだったかな。通い慣れた道を歩くのは、なじみの花に逢えるかどうかも楽しみの一つです。

ふだんは珍しくない小さな花も、雨に濡れた姿はどれもびっくりするような美しさを見せてくれることを発見しました。

でも三壁山を超える前にもうこんなに下半身はびしょ濡れになっちゃいました。登山靴の中にも浸水が始まる感じがしてきました。

Dエリアは意外とその良さが知られていません。ところどころ展望が開けるピークや草原などもありますが、シラビソやコメツガなどの針葉樹の深い森の中を歩く区間が多いのが地味なイメージなんでしょうか。苔生した森の小道ではゴゼンタチバナの花が咲き乱れているところは、なかなかのいい雰囲気でした。

大高山を超えると、天狗平とも細野平とも、もしくはミドノ平とも呼ばれている湿原が眼下に現れ、これから目指すDエリアの深い稜線の山々も現れます。

五三郎小屋の水場にも寄ってみました。荒れ果てた小屋ですが、しぶとく立ち続けています。内部の地面にはヒカリゴケがなんとなく薄気味悪さを醸し出しています。もう30年くらい前の厳冬期の2月に、この中にテントを張って泊まった思い出があります。

オッタテ峠からオッタテ峰、ダン沢の頭と過ぎると、赤石山がやっと近く感じます。ここはガラン沢を左に大きく俯瞰できるDエリアのもっともディープな区間です。両側が根曲がり竹に覆われているところは、クマの気配を常に警戒しながら歩かなければなりません。

赤石山への登りでは振り返ると魚野川源流のはるか向こうに苗場山や白砂山稜線が眺められました。

仙人池には大きく成長した水芭蕉が出迎えてくれました。ここまで来ればもう赤石山はすぐそこです。赤石山からは極端に人の気配が感じられるようになり、これまでの張りつめた緊張感が和らいでいくように感じました。

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