沓形稜(標高520m)PM3:27~鴛泊登山口PM5:00距離約7.6km
沓形稜下部もデルタ状の広大で緩やかな尾根で、古いモービルとスキーの跡も残っていた。もちろんウロコテレマークスキーにとっても面白そうな大斜面だ。目を凝らすと、右上に避難小屋が雪にほとんど埋もれながらも、そこにあるのがわかった。左下には展望台といわれる施設もわかる。見覚えのある景色や地形なのは、昨年は1日で1周出来ず、この沓形稜から2日目をスタートしたから。その時は天気があまり良くなかったので、今日の晴天は前回の屈辱を晴らすこともできた。
ポン山さんはもうすっかり元気そうで、いよいよ後半最後のこの景色とスキーの楽しさを堪能しているようだ。家内は相変わらず朝一から変わらないマイペースで、しんがり役をきちんと守っている。眼下の海はますます黄金色に輝いて、息を飲む美しさである。
利尻の地形の特徴は、深く刻まれた谷や沢のほとんどが、広くなだらかな裾野へと下るにしたがい河川の地形が無くなってしまうこと。そんなことから、涸れ川のトビウシナイ川が利尻町と利尻富士町の町界に流れているが、上流部がどこなのか、たぶんこの辺なんだろうけど、はっきり特定できない。同じことがオビヤタンナイ沢川にも言える。だから沓形稜と北稜の間の沢が、トビウシナイ川なのかオビヤタンナイ沢川なのか。2万5千図とにらめっこしていると訳がわからなくなってくる。
利尻町と利尻富士町との町界を流れている川をトビウシナイ川と認めると、利尻山頂からダイレクトに落ちる谷は町界なので、トビウシナイ川ということになる。しかし、昨年滑った長官ピークからの谷、利尻避難小屋直下の谷であるが、これは利尻ローカルのポン山さんによればオビヤタンナイ沢川と話していた。これをオビヤタンナイ沢川だと確定すれば、困ったことになる。標高600m付近でこの谷は合流してしまう。二つの川が途中で合流して下流でまた分かれてそれぞれ名前を変えるというのは常識的ではない。沓形稜と北稜の間の川の名前を1つに決められれば、わかりやすいと思うのだが・・・・
ポン山さんの言うとおり、沓形稜と北稜との間の川をオビヤタンナイ沢川と決めるとすると、いよいよ沓形稜からそのオビヤタンナイ沢川を横断である。利尻山頂からダイレクトに落ちる谷が本谷とすれば、昨年ポン山さんと家内と3人で長官ピークから滑った沢は、さしずめオビヤタンナイ沢川左俣と名付けられるだろうか。迫力の本谷を越えるときも、背中を強力に押してくるこの風はまさに神風で、何もしなくてもなかなかのスピードが出るのに驚く。雨傘など開けば斜面も駆け上がっていくほど。
そして小尾根を越えると見覚えのある景色が待っていた。オビヤタンナイ沢川左俣。避難小屋の沢と呼んでもいいかも。古いスキーのあとが残っていた。ここまでくればあとはもうほとんど下りだけなので、かなり余裕で休憩。ポン山さんは持ってきた水の量が足らなくて節約しながら水分補給していたが、なんとか持ちこたえたよう。こちらはちょうど良い量だった。
1つ大きな尾根を越えると、長官ピークからの尾根の途中1100m付近から落ちている沢を横断。この沢がまたスキー向きの良い斜面。また、名前をなんて付けたら良いんだろう?困ってしまう。
ポン山が大きく見えてくる。今朝見たばかりなのに、懐かしい気持ちが湧き起こってくるのは何故だろう。通称ベースと呼ばれている雪原の下で、たくさんのトレースに出会う。もう時間的には、ほとんどの入山者が下山してしまった頃。しかし、これから山に入るテント装備のスノーボーダーの方が上がってくる。仲間3人とこれから4日間の日程だそう。明日からも利尻はまだまだ好天が続きそうで、彼らもまた懐かしい思いでポン山を見ながら山を下りてくることだろう。
湧水を汲みに来たポン山さんの知り合いの方を、ゴール間近のところで追い抜く。どこへ行ってきた?1周した!なんて会話になり、いきなり利尻を1周してきたと答えても、普通の人はあまりピンと来ないだろうなと思った。午後5時ジャスト、今朝スタートした鴛泊登山口にゴール。
ゴールしてもすぐには1周達成の実感がなく、じわじわと込み上げてくるに違いない。大げさな言い方だけど、1年間あたためてきた計画が達成できた。この後ポン山さんと夜は魚勝で盛大に祝杯をあげるのだ。