February 18, 2025

シークレットkuniBC「ガラン谷一周」2000-2-26,27

ガラン沢は昔から魔の谷と呼ばれている。実際はそんなに難しい遡行技術が必要な谷でもなく、準備さえしっかりして臨めば怖れるほどでもない。ただ昔から遭難が多いので魔の谷などと呼ばれるのだろう。確かにガラン沢とそれにそそぎ込むいくつもの支沢は、あり地獄のように上州側の奥深い山に食い入るようにして刻まれていて、志賀高原のスキーヤーが油断すれば迷い込んでしまうような地形なのだ。ガラン沢の由来は、伽藍のような断崖絶壁がそそり立っているのでガラン谷と呼ばれ、この名が世間一般に知れ渡ってガラン沢になったらしい。六合村誌によると切畑川というのがもともとの川名だったようだ。今、切畑川の名前でガラン沢のことを話し出しても、誰にも通用しないだろう。そんなガラン沢を馬蹄形に取り巻く山々を、今回はスキーで走破した。 林道を八時少し前に歩き出す。スキーのトレースがかすかに残っている。先週の自分のだ。天気が悪くて、風雪の中だった。ミドノ沢源頭は、ガラン沢ほどではないがどうも地形が複雑で、地図と実際のギャップが大きいと感じていたので、無理しない程度のルート探査という目的だった。 馬止口からいよいよ鷹巣尾根に取り付く。赤石山方面へルートをとるのだから、鷹巣尾根をそのまま最後まで登ってしまえばいいのだが、今回は一つ石下部を右に大きくトラバースしてミドノ沢源頭部に出て、左側のオッタテ峠から派生する支尾根に取り付いて国境稜線上に出ることにした。鷹巣尾根ルートは、一つ石までかなりの急登なので重荷にはつらそうなこともあり、前から今回のルートを試してみたかったのだ。結果的には急登も少なく、樹林帯をのんびり歩けるいいコースだった。 途中で大休止をとったりしたので、国境稜線上のオッタテ峠を通過したのは12時を過ぎていた。縦走の場合、お昼を過ぎるとどの辺りまで行けるか気になってくる。2月初旬にダン沢の頭へ日帰り往復したときは、山頂から赤石山を眺めて結構簡単に行けそうだななんて見積もっていた。明日の天気の崩れを用心すれば、今日は行けるところまでがんばっておきたい。できれば赤石山を越えておきたい。 オッタテ峰を過ぎて、ダン沢の頭は湯ノ沢の源頭を巻くことにする。急斜面で、おまけにルンゼ状の沢をいくつか跨ぐので、ラッセルが厳しい。頂上直下には、巨大なセッピが発達していて気も抜けない。あまりにもつらいので、途中で先頭を代わってもらい、やっとの事でダン沢の頭を巻いて国境稜線上に這い上がった。時刻は2時を回ろうとしていた。 素直に稜線をたどった方が良かったかも知れない。途中で、我々に気づいて湯ノ沢を身軽に駆け下りていく熊みたいなカモシカに遭遇したが、私たちはかなりバテバテだった。 ダン沢の頭~赤石山間は今回最も楽しみにしていた区間だけど、天気が悪くて眺めもいまいちで、ラッセルの拷問に苦しみながら歩くことになってしまった。赤石山直下の登りまでは緩やかなアップダウンが続くので、ザラメ雪の季節ならウロコ付きのテレマークスキーがきっと快適だろう。ただし、結構地形が複雑で視界がないときに稜線上を忠実にたどるのは難しそうだ。湯の沢の頭を過ぎると、小規模だが二重山稜の地形みたいになっていた。仲間はこの辺りでテントを張って行動を終了し、のんびりしたかったようだ。 なんだかんだ苦労しながらも、4時15分に赤石山頂上にたどり着いた。もう10年近く前に、ここに春のドカ雪で2泊も停滞したことがあったが、今回そんなことは御免だからもっと先に進みたいと思う。シールを剥がしてこれから下りにかかるが、どこまで行けるだろうか。気分的には、大沼池まで行けると楽だなと思いながら4時35分に出発する。夕闇が迫り、視界も利かなくなってくる。急斜面なので草津峠への国境稜線がはっきりしないが、とにかく滑りやすそうなところを選んで下る。が、疲れた体に荷も重く、おまけに雪質もいまいちで苦労する。標高差で100メートルも下ったところに突然きれいに整地したテント場に出た。昨晩かなり多人数のパーティーがここで幕営したようだ。おあつらえ向きの幕営地に偶然出食わし、仲間と即刻ここにテントを張ろうと意見が一致した。 翌朝、天気はいまいちで視界は思ったより利かず、稜線伝いに鉢山方面へたどることをやめて大沼へ下ることにした。私はもう少し楽しい下りが期待できるかと楽しみにしていたが、樹林が濃くて散々な目にあった滑降だった。途中から小さな沢の中を滑って這々の体で大沼池に出た。大沼池はとてもいい雰囲気のところだった。 大沼池上に出て進路をどうするか悩んだ。このまま志賀山の右側を登って前山スキー場に出るのが一番納得のいくルートなのだが、果たしてこの深雪をラッセルする体力があるかどうか。蓮池方面への林道をたどった方がアップダウンもなく、体力的にも時間的にも何とかなるだろうということで、仲間との協議の末計画を大幅に変更することになった。しかしこの林道歩きも、そう簡単ではなかった。2時間近くかかってようやく車道に出た。12時だった。やはり厳冬期のガラン沢一周はそう簡単ではないということを思い知らされた。車道から蓮池までまたもやスキーを担いで歩かされた。やっと蓮池のバスターミナルにたどり着いたら、ちょうど良く熊ノ湯へのバスがあった。それに乗り込んで熊ノ湯まで行き、リフトを3本乗り継いで横手山山頂に立つことができた。 渋峠スキー場を滑って志賀草津道路を歩き、芳ヶ平へのいつもの快適な尾根を滑って2時45分に何とか芳ヶ平ヒュッテで休憩させてもらうことができた。夕方近い時間にもかかわらずスパゲティの昼食をいただいて疲れた体を癒すことができた。1時間ほどのんびりして、草津スキー場へ下る。ここからの下りが一番雪質も良く快適だった。5時、草津スキー場に着いた。車で出発地点の車を回収し、ガラン沢一周は完成した。