July 15, 2025

2005北海道・海旅・追分ソーランライン

松前町折戸海岸~知内町(漕行距離約49km) 最終日。今日も暗いうちに起き出して、5時半前には海に浮かぶ。2度ほど大きな鉄砲の音が海上まで響いた。熊を仕留めたのだろうか。熊騒動がその後どうなったのかは知らない。ただ、知床が世界遺産に認定されたこの北海道で、熊とどのように共存していくことができるのかは、これからの大きな課題だろう。知床の地と対極点にある地で起こったこの騒動は、これでひとまず解決したのだろう。ただなんとなくスッキリとしない後味が残った。(注 2005年時の印象) 弁天島をかわすと、正面から朝日が照らした。昨夜、松前の飲み屋で夕食をとった。寂れた雰囲気を感じた。かつては、蝦夷地の中心だった松前である。そんな松前の町並みを左に眺めながら、白神岬を目指して一直線に漕ぐ。左から出し風が強く吹き始めたが、それはちょうど及部川からのもののようですぐに止んだ。白神岬にかかると、潮流が川の流れのように激しくなるのがわかった。この岬が漁師にとって難所だということは、後で知った。こんなに凪いでいたのは珍しかったらしい。 白神岬を順調にかわし、いよいよ津軽海峡だ。福島町や吉岡町の沖合は、昆布の養殖が盛んにおこなわれていて、作業中の漁師から2度声をかけられる。海の様子を尋ねると、「陸伝いに行けばいいけど、ゆるくないぞ。」と、温かく励まされる。海上で、知内の老舗温泉旅館に今日の宿を予約することにした。青函トンネルが真下にある吉岡町を、ちょうど10時頃にさしかかって、思い切って秘境である岩部海岸の先を目指すことにした。 岩部海岸は、知る人ぞ知る秘境で、陸路はない。ちょっとした知床である。さすがに、かつて漕いだ知床は、私たちのような通りすがりの旅人にさえ、ヒグマやオジロワシ、エゾシカなど、濃密な野生を容易く垣間見せてくれた。この岩部海岸は、荘厳な静寂が響き渡っていた。海にそそり立つ断崖は250m以上。圧倒される。昆布がびっしりと茂る海は、まさに豊饒そのものである。大岸壁の真下から仰ぐと、猛禽類の大きな鳥が、はるか上空を優雅に旋回をしていた。この旅のクライマックスである。足早に通り過ぎてしまうのは、あまりにも心残りである。 矢越岬は、時速9km以上で越えた。そして、途中小谷石というところで上陸休憩し、函館からのバスが通る知内までひたすら漕いだ。最終日、約49km漕いだ。今回は日を重ねるごとに漕行距離を伸ばしたが、もう少し前半がんばっておけばよかった。館まで残り30kmを残し、3年目の北の海旅を終えた。来年は、この旅の続きをするかどうかは、わからない。